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315 自主避難
2012年04月19日13時10分
自宅をでてまずは国道4号線へ向かう。東北を東京から青森まで縦断している道路だ。本来なら東北自動車道を行くのだが震災の影響で通行止め。自宅の三春から4号線に出てからひたすら南へ。

「群馬のお姉さんに電話してみて」

東京に弟2人いるがどちらもアパート暮らしだ。とてもこの人数は泊まれない。ここはやはり一戸建ての群馬に住む嫁さんのお姉さんに相談する他ない。

「わかった」

「あ、もしもし、うん、あのね、今、家でたんだけど、あ、そうじゃなくって、避難するのに。それでねお姉ちゃんちに行っていい?」

すると電話口からえええ!と言う声が漏れてきた

「だってもう出ちゃったもん。うん、本宮のお父さん、お母さんも一緒。どのくらいだろう・・・いつ帰れるかわからないけど・・・でも二週間くらいはお願いできないかなあ・・・」

なんだかんだ話をしていたが・・・

「うん、わかった、じゃあね。はいはい」

て電話は終わった。

「大丈夫だって。近くに来たら電話ちょうだいだって」

「なんか突然で驚いただろうね。悪いことしたね」

「最初はびっくりしてたけど後は大丈夫って言ってくれてたよ」

「いい人だ」

出発してからようやく目的地が決まりほっと一安心。

4号線に出てからは通い慣れた郡山を通り過ぎ須賀川と言う街へ

ここは郡山や三春に比べ地震の被害が大きかったようだ。屋根の瓦は壊れへいや外壁も崩れている家が目立つ。

「うわ!あれ見て!凄いことになってるねぇ」

お袋が車窓から外をみて騒いでいる。

だがやはり今の俺は群馬までのガソリンが心配だ。

車は国道4号を南下する

白河を過ぎて栃木県へ。この辺までくれば放射線も少ないだろう。。
黒磯から西那須野に入りトイレのリクエストがあったのでセブンイレブンに停めようとしたがなんと店の外から見える店内の中での長い行列

「あれ・・トイレだな。」

「無理だね。」

いったんは駐車場に停めたがすぐ出発。
少し走ると国道沿いに寂れてはいるが広い感じの個人スーパーを発見

「ここにしよう」

車を停めると外は雨。

「ああ雨だよ。。大丈夫かな」

そう、原発の事故以来とにかく雨が怖い

「ここまでくれば大丈夫だろう?」

一同、車から出て店内へ。中では演歌がかかっている感じ(笑)

さっそくトイレの場所を聞いて確認に。
久々のいわゆる「ぼったん便所」

「文句言わない。行列に並ぶよりましでしょう?」

次々とトイレに行く中、店内を物色してまわる。
郡山に比べると食べ物がたくさん置いてある。

「おお!カップヌードルもなんでもあるよ」

お袋がそう言いながらあれもこれも買いまくる

レジにて清算をする際、店の人と話をした。

「福島から来たんですよ、避難するのに」

「どうなんですか?実際のところ原発は」

「こちらもまったくわかりません。」

「心配ですね」

このころからよく聞く話だが福島の人、車はお断り。
でもこの店はそんなことはないようだ。

トイレも買い物も無事済ませ再出発

途中、車内のテレビでニュースを見る。

菅総理が国民にメッセージを発表
国民の皆さん、落ち着いて聞いてください
から始まる総理のメッセージを映画やドラマ以外で本当に聞くようになるとはなあ・・・
福島第一原発から20km以内より全員退避。
30キロメートル以内は屋内待機。
福島第ニ原子力発電所については10キロメートル以内より退避。

「全員退避とはいよいよだなあ。」

「遅すぎるんじゃないの?もうかなり被曝とかしてるんでしょうねえ」

「俺たちも随分やられているのかな。本当は」

っと!電話!お客さんからだ。

「伊藤さん、今どこ?」

「今ですか?いい・・・今は郡山市内です」

「あ。そう。あの給水サービスの機械って使えるよね」

「はい、大丈夫ですよ。どうかしました?」

「各店舗から問い合わせあってさあ。大丈夫ならいいよ。了解」

この電話で一気に仕事のことが気になる。。
やはり他の業者関連は今も対応しているんだろうなあ

そしてさらにひたすら南下して宇都宮へ
時間はもうPM7:00をまわっている

ガソリンは・・・思ったより減らない

「そうかあ!エコカーだからだ」

最近の車は凄い。あんなに走ったのにほとんどガソリンが減っていない。
高速を使わず国道を走っているのも効いているのだろう

「これはこのままいけそうだな」

しかし先ほどの客先からの電話が気にかかる

「家族を全員、群馬のお姉さんのうちに預けたら俺は帰るか」

などと考えるがガソリン次第だ

宇都宮市内を走ると外はすっかり真っ暗だ

この辺までくればガソリンも入れられるだろうと思ったのが甘かった

どこのスタンドもほとんど閉店。

するとひとつのスタンドに明りが。しかも車が停まって給油しているではないか!

「おおお!!」

そのスタンドに停める。しかし従業員はまったく無視
車から降りて従業員に声をかける。

「すみません。給油をお願いしたいのですが」

若い従業員がこちらも見ずにいう

「ガソリンがないので無理です」

「え?でもあの車に給油・・・」

「ないものは何言われてもないですから無理です」

カッチーン!!

「そうですか。わかりました。」

たぶん、常連かもしくは従業員の知人といったところだろう
ひどい話だ。
こういう状況下ではこんな理不尽なことも起きるのだろう

平時にはニコニコしていらっしゃいませー!なんて言っているのにこんな状況ではみな人が変わる。

「どうしたの?」

「ないってよ。ガソリン」

「ない?だってあの車に」

「もういいよ。」

うちの車が出るか出ないかでスタンドは店内の明りを一斉に消した。

「この辺では給油は無理だよ。もっと南に行かないとね」

そのまま4号をひた走り車は小山へ。そこから50号線にでて群馬方面へ向かう

佐野を過ぎたあたりで

「食事にしよう。」

国道沿いのラーメン屋へ。

足利付近だけれど町は真っ暗。この辺までくれば通常通りかと思いきや震災の影響はあるようだ

ラーメン屋に7人入り次々と注文をする。

食事が来るまでに携帯でいろいろなサイトを見る
こんなとき2チャンネルの情報が結構期待できると聞いたことがあったのでのぞいてみると・・

フクシマ終了。そのうち生き物は住めなくなる

いつまでもフクシマにいる奴は死にたいやつ

やっぱりねえ・・まあしょうがないか
そんな中でも気になったのが・・・

福島第一原発の3号機はプルサーマル。
名前の通り使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを使用した原発だよ。こいつが爆発したんだからとんでもないことになっているよね。半径300kmは20万年は人が住めない

本当かよ。300kmって東京も入るだろう。。

さらに

アメリカ大使館が福島第一原発80キロメートル以内のアメリカ人立ち入りを原則禁止にしたってよ。民主党は20km。この違いはなに?

アメリカのように80km退避にしたらそれぞれ人口30万人の郡山市、福島市、いわき市まで入る。100万人も退避させたらとんでもなく金がかかる。見殺しだよ


ああ。。。見なきゃよかった。
なんでこんなことになっちゃうんだよ。
もう帰れないのかなあ。福島には。どこに住めばいい??
家のローンはどうなる??仕事は・・・
カウンターパーツは・・・


「パパ、ラーメン来たよ」

「あっ、、ああ。」

なんとこの時ほど味がわからなかったラーメンを食べたことはない

「さあ行くか」

すると本宮のお母さんが

「ここはうちがだすから。」

「いや、いいですよ。僕が・・・」

ん?財布がない。

「あれ?」

「財布がない。車か??」

結局、本宮のお母さんにごちそうになってしまう

しかし車に戻っても財布が見当たらない

「あれれれ。。。忘れたか?家に」

「ええ?どうするの?カードとか健康保険とか。。免許書も」

「やばいなあ」

やはり・・家族を置いたら戻るか・・・福島に

ラーメン屋を後に走ると渋滞にはまる。
しかしこの渋滞おかしい。

「あれ?もしかしてこの渋滞って??」

知らないうちにガソリンスタンドの行列に並んでいたようだ

「このまま並んでみようか」

1時間ほど並ぶとスタンドの従業員の方らしき人が道に立っている
前の前の車に話しかけ、さらに前の車に。
そしてうちの車の近くにくると

「すみません。10リッターですけどいいですか?」

「全然OKです、ってか給油できますか?」

「はい、大丈夫ですよ」

おーーー!!車内一同大喝采!!

「よかったねええ」

エネオスだ。

その後1時間ならびようやく10リッターではあるが給油できた
燃料計も一気に半分まで戻る

よし。これなら帰りにまたここに寄れば。

「あのさ」

「どうしたの?」

「俺、みんなのこと群馬のお姉さんの家に降ろしたら戻るわ」

「なんで?」

「仕事も気になるし。財布も気になるし」

「大丈夫なの?」

「ガソリンも帰りにまたここに寄るよ」

車は伊勢崎市に入りお姉さんの家まで多少迷ったが無事到着。

お姉さんの家族は娘さん1人と旦那さんの3人だが娘さんは現在は美術大学を卒業して東京に就職し1人暮らし。今はお姉さんと旦那さん2人で暮らしている。

到着するとお姉さんと旦那さんが暖かく迎えてくれた。
旦那さんが

「大変でしたね。ゆっくり休んでください」

「すみません。急で。お世話になります」

「大丈夫ですよ。それよりね、今こっちでもかなり大きな地震があったんですよ」

「震源地はやはり東北ですか?」

「いや、違うみたいですよ」

テレビを見ると見慣れないテレビ局でヘルメットをかぶった
アナウンサーが出演しているニュースが放送されている

SBS・・静岡?

「静岡って・・と、東海地震ですか?誘発されて」

「東海地震じゃないみたいだけどね」

こりゃ大変なことだ。この国はどうなってしまうんだろう・・

震災の時の様子や原発事故の話で嫁さんやお姉さん、
お母さんが盛り上がっている。

「すみません、私、仕事のこととかありますので帰ります」

「これからですか?」

「戻るの?福島は危ないよ」

「大丈夫です。また今週末に来ますのでみんなのこと、よろしくお願いします。」

「まずコーヒーでも飲んで休んでいったら?」

「ありがとうございます」

コーヒーをご馳走になりながらNHKのニュースを見ていた。

水野解説員だ。この人の解説が一番当てになる。時計を見るともう11時。

「そろそろ行ってみます」

支度をして外にでる。なんか久々に外が怖くない。思わず深呼吸をしてみる。すると嫁さんと娘が出てきた。

「お父さん、帰って来てね」

「向こうではマスクを重ねてつけなよ」

「大丈夫だよ。」

少しすると照れくさそうに息子が出てきて

「気をつけて・・」

「ああ、なにかあったらお母さんと舞ちゃん頼むぞ」

「縁起でもないこと言わないの」

「じゃあ行くよ」

なんだこのアルマゲドンみたいなシチュエーションは(笑)

こうして家族が心配する中、単身、放射能に汚染された福島に戻るのであった。

理由は仕事・・ではなく家でもなく、バンドでもなく・・・

忘れた財布がひじょーーに気になってしまっていたからなのだった

(笑)
news article by イトウシンイチ
315
2012年04月08日15時06分
ドタバタ劇があった翌日は火曜日、仕事は自宅待機だったが担当しているスーパーチェーンの本部で打ち合わせがあったので向かった。

スーパーチェーンの本部は郡山市内にありそこの3Fの会議室には既にいくつかの業者が集まっていた。
打ち合わせはスーパーチェーンの開発の担当の方々がリーディングして各店舗のメンテナンス状況を把握、指示する内容だったが主に建物、電気、水道ガス設備がメインで我々のような厨房機器関係はまだ出番がない。

当然、そんな中でも昨夜の3号機爆発や2号機の燃料棒露出の話題はでた。

打ち合わせ中に電気設備業者から

「実は電気関連筋からの情報ですが今日は屋外での仕事はするなとのことなので一部の作業は見送らせてください」

この言葉に一同騒然となる

「電気関連筋とは東京電力ですか?」

「屋外の作業はするなってやはりそんな状態なんですか?」

「そりぁ3基も爆発すれば状況はよろしくないよな」

「3基もって2号機も爆発したんですか?」

「そういえばどうなったんだろう?誰かニュース見れる?」

「今、テレビ見てます。東電があきらめたそうです」

「はは?東電があきらめた?なに言ってんだ?」

「東京電力が作業を放棄して撤収するらしいですよ」

「て、撤収って、そんなどうするんだよ」

「あとは自衛隊か米軍にお願いしたいと政府に打診したとか・・」

「とにかく打ち合わせは終了します。出来る範囲での対応お願いします」

打ち合わせは終わり解散するとすべての業者が電話をかけ始めた。

「東電が原発対応放棄したって!あ?ああ。そうそう、今日はみな屋外での作業は中止させて。」

「ああ、そうそう、子ども達だけでも会津の親戚の家に・・・」

「今日は自宅待機だ。ああ、全員返して」

「皆さん、今日はもう解散します。ご苦労様でした!」

俺は本部開発の方々にあいさつして本部をでた。

そのまま車を走らせホームセンターに向かった。
ホームセンターは通常通り営業している。先ほどの本部会議室での騒然とはまったく別な静けさで従業員の方々は普段通り仕事をしている。

情報量の違いがこんなにも状況の違いを作っているのか・・・
これがもし大津波がくるのだったら政府も県も市も避難退避するよう大声でアナウンスするのだろうがこのようなあやふやな状態では情報の統一ができない。危険だと避難をすれば
大袈裟なあ、心配し過ぎだよなど非難される場合もあるだろう

俺はホームセンターで細いビニールの管を探した。同じように探している人がいた。その人が突然話しかけてきた


「ガソリン抜くのに使うんですか?」

「はい」

「それがなかなか抜けないんだよね。何度か試したんだけどねぇ」

「この細いのもダメですか」

「それは試してないなあ」

「じゃあこれ買っていきます」

手にとった細いビニールの管を精算して家に向かう。
昨夜と同じように石油用給油ポンプの先に先ほど購入した管を差し込みビニールテープで巻いてお袋の車の給油口に差し込む、

だめだ。やはり入っていかない。
ふと今朝の打ち合わせの言葉がよぎる

屋外での作業はやらないでください

これ以上なにやっても無理だ。

家の中に戻りニュースを見ている嫁さんに

「行くぞ。ガソリンはしょうがない。行けるところまで行く。多分、栃木か埼玉とか関東ならスタンドでガソリン入れられるだろう」

「大丈夫かな・・・」

「ああ、それと本宮のお父さん、お母さんも迎えに行こう」

「わかった。」

リビングにいる子ども達とお袋に

「これから避難する。今度は本当に行くよ。準備して」

「ガソリンは?」

「なんとかする。これからお父さんとお母さんは本宮のおじいちゃん、おばあちゃんを迎えに行くからそれまでに準備しておいて」

嫁さんと2人、お袋の車で本宮に向かう

「もし行かないって言ったらどうする?」

「まあ無理強いは出来ないからな。」

本宮につき避難する旨伝えるとなんの躊躇もなく2人は準備を始めた。

嫁さんが
「あんまり荷物持ってこないでね。車に7人乗るんだから。」

「わかったよ」

荷物と2人を乗せて家に戻った。

既に準備は終わっていたので荷物を全てワゴン車に移した

「ガスの元栓、水道の元栓、電気のブレーカーすべて閉めて」

「準備はいいか?出発するよ」

こうして我が家家族5人と本宮の2人。
計7人の避難旅行が始まった
news article by イトウシンイチ
314 その夜
2012年04月08日04時16分
その日の夜はテレビにくぎ付けだった。

原発事故以来NHKに頻繁に出ている水野解説員が説明しているニュース番組を見ていた。

3号機で水素爆発が発生。爆発音は2回にわたり、水素爆発特有の白い煙とは別に灰褐色の煙が高くあがったとの情報。3号機の建物外壁がなくなり、骨組のみとなっている模様。半径20キロ圏内屋内退避指示

格納容器は健全であり放射性物質飛散の可能性低いと官房長官発表

さらに2号機にも危機的状態が・・・

2号機は冷却水の循環ポンプが停止。炉内の圧力が上昇し水位低下がはじまり海水注入開始したが燃料棒上端の露出がはじまり夕方6時には燃料棒が完全に露出したとのこと

「常に水中に浸かっていなければならない燃料棒が完全に露出したということはメルトダウンの危険性があります。つまり普段は水に冷やされた高温の燃料棒が循環機能が停止したため冷やしている水がほとんど蒸発してしまい露出した燃料棒が自身の熱で溶け始め格納容器の底に溶け落ちる状態です。これがそのうち格納容器も溶かしてしまう可能性があり格納容器が損傷したら大量の放射性物質が放出されてしまいます。これは人類が経験したことのない状態なのです。」

なんだってええ・・・

「政府の発表では安全だと繰り返していますが決して安全ではありません。避難区域を今の20kmから100kmにするべきです」

メルトダウン・・・チャイナシンドローム

あり得ない。。

日にちはもう15日になっていた。夜中の2時

むくっと立ち上がり一緒にテレビを見ていた嫁に

「逃げるぞ」

「にげる??い・・・今から?」

「そう、今すぐ」

「どこに??」

「東京か群馬。連絡して受け入れてくれるとこ」

「・・・・・・わかった」

ええ?普段ならいいから落ち着いてとか言って却下されるのだが今日は事情が事情だからかあっさり同意してくれた。

「じゃあさっそく準備して。子供たちとお袋起こしてくる」

嫁さんは起き上がりカバンを出して着替えなどを詰め込み始めた

子供たちを起こしに部屋にいく。

「おい。起きて、避難するぞ」

寝起きの息子は時計を見ていう。

「今から・・?なにかあったの?」

「2号機も危ないらしい。これ以上はここにいられない」

「・・・・わかった」

娘はすくっと起き上がり準備を始めた

「着替えと貴重品だけ持っていこう。戻ってこられるかわからないけどあまり荷物が多くても困るから」

夜中の2時に我が家はあわただしく準備を始めた。
ニュースを見て殺気立っていたのかもしれない自分にみなおびえているようにも感じた。

「お袋、起こしてくる」

そう言って1階の和室にいる母に声をかけた。
起きて布団の中でニュースを見ていたようだ

「見てたでしょう?2号機もやばいよ。これから避難するから準備して」

「今からかい?」

「ああ、もう政府もなにも信じられないよ」

そういうと俺は外に出て車のエンジンをかけた。
車は昨年買ったワゴン車のトヨタノア。
こういうときはやはりワゴン車が便利だ

3月半ばでも外はまだ寒い。そして時間も時間なので真っ暗闇
物音一つしない。近所の家は何件か明りがついているがどこも外に出て逃げ出す雰囲気はない。
うちだけこんな夜中に大騒ぎだ。

車に準備ができた荷物を積み外で待つ。
星空がとてもきれいだ。。なんでこんなことに。
家のローンだってまだまだ残っているし。
仕事だってこれからどうする。
カウンターパーツはもうできないのかな・・・
おのれえええ東京電力めえええ・・・
なんで東京で使う電気を福島で作ってんだ!!
東京で使う電気を作っているんだから東京のど真ん中に原発作ればよかったじゃないか!こういうことが起きる可能性があったから福島に原発作ったんだろう!ひっどいはなしだ!!ばーろー

そんなことを考えていると準備ができた嫁さんが外に出てきて車に荷物を積み始める。少しすると子供たちも眠そうな顔をして出てきた。
最後に母が出てきて荷物を積み込み車に乗り込んだ。

「よし、準備OKだね」

あああああ!!!ガソリンが・・・

そうガソリンが約3分の1しかない・・・
そうだ。一昨日、本宮から郡山に向かった時随分と使ってしまったようだ。。

どうしよう・・途中止まってしまっても給油するところがない

「どうしたの?」

「そういえばガソリンがなかったんだ」

「あ・・・ああ、、ええ?」

あ!お袋の車

そう母の車にはまだガソリンがかなり残っている

「お袋の車からガソリン抜いてみるよ」

車から飛び出し家に戻る。納戸にあった未使用の石油用の給油ポンプを持ち母の車をノアに横付けにする

母の車の給油口を開けポンプを突っ込む。が・・・
入っていかない!!昔の車はこれでガソリンが抜けたのに・・・
だめだ。なんどやっても入っていかない

車の中からじっと嫁さんと子供が不安そうな顔をして見ている

だめだ・・抜けない

車の中に戻り

「だめだ。。ガソリン抜けなかった。このガソリンで東京や群馬にいくのは危険だよ」

「どうするの?」

「今日はやめよう・・・避難するの。家に戻ろう」

というと息子と娘はそそくさと家に戻った。

「まだ大丈夫だよ。近所の人たちだってだれも避難してないみたいだし」

母が言う

「ああ、すまなかったねえ。」

結局その日は家に戻りテレビを見ていた
荷物はカバンに入ったまま部屋の隅に置いておいた
息子と娘は自分の部屋に戻りまた寝てしまったようだ

「少し様子見るか・・・」

「そうだね。それにしても」

「それにしても?」

「ちょっとカッコ悪かったね」

「だよね」
news article by イトウシンイチ
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