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2012年10月02日17時00分
とか言いながら特に何をするでもなく普通にパソコンをいじりニュースを見て寝たわけですが。
翌日、会社に行くとあの御大がなにやらわめいている。

「なんで会社に出てこないんだ?通常営業日だろう?こんな時こそ・・・」

すると所長が
「いや、放射線量も高いですから」
「放射線なんか少ないだろう!」

まったく、おまえになにがわかるんだ?責任持てるのか?

とも思ったが触らぬ神に祟りなし。我関せず、ほっとけほっとけ

さあ!さっさと営業所から逃げ出して仕事しましょう・・・と言いましても結局、客先自体が被害が大き過ぎて我々以前の問題。まずは建築、設備、電気でしょう。
んん。やることない。帰ろ(笑)

途中セブンイレブンによったが相変わらずなにもない。面白かったのは普段、カウンターにて調理してから販売してるであろうフランクフルトソーセージやり唐揚げが調理前の状態でお弁当コーナーに並んでいた。それ以外の食べ物はない。おっとあった。冷凍食品!スパゲティミートソースを購入。

ガソリンスタンドも相変わらずとんでもない行列。
落ち着くまでまだまだ時間がかかりそうだ。

翌日18日。待ちに待った金曜日だ。
朝、会社に出勤すると今までより人数が増えている。
久々に朝礼なども行われた。
朝礼を済ませまた即、営業所をでた。
いくつかの仕事を済ませ家に向かった。
そう、このまま愛する家族がいる群馬に向かう予定だ。

家に着いてから旅支度を済ませ自家用車に乗り込んだ。

待て・・

そうだ。福島の道路は放射性物質だらけ。当然タイヤにも。
このまま群馬に行くと迷惑だ。
ってことで庭の水道からホースを引っ張り出し洗車することに。

まあ今考えたらこの後、当然福島県内走るんだから一緒だろう!と思ったがあの時は県外に出ることに大きな罪悪感を感じてしまっていた。

ごめんなさい。福島から来ちゃいました。

みたいな。

さあ洗車も完了し無事出発
高速は相変わらず通行止めなため、国道を通って群馬まで。
途中、白河のラーメン屋で昼食。
店のテレビでは原発のニュースが。
内容は覚えていないがそのニュースを見て

なんだ。収まる気配も感じない。
将来どうなるんだ・・

と重く感じたのを覚えている

栃木県に入るとあちらこちらで停電だ。信号まで止まっている

そう計画停電だ。

とある地域のみ停電で他は煌々と電気が灯っていたりするからやりづらい

ようやく目的の群馬に。着いた時間帯が伊勢崎の町がちょうど計画停電真っ最中だった。
信号が消えていてあわや事故!と言う場面もあったが無事に到着。
家族と再会することが出来た

到着すると群馬県伊勢崎地区はちょうど計画停電真っ只中であちらこちら真っ暗闇。
そんな中到着すると家族みんなで出迎えてくれた。

「無事で良かったね」
「停電で真っ暗だったけどロウソク灯してみんなでトランプしてたよ」

「計画停電は9時までだからそろそろ終わるなあ」

とお兄さんが言った途端パッと灯りが灯った!

「おお!」

群馬のお姉さん宅には家族全員からうちの母親までお大変お世話になってしまった。本当にありがたい。感謝感謝だ。
明日は母親を東京の弟の家まで送っていく。母親はこれからは東京の弟に面倒を見てもらう。

群馬のお姉さん宅では和室の部屋を一室借りて家族雑魚寝だ。普段はそれぞれの部屋に閉じこもっているからこんな機会はまたとない。

今回の震災のこと、原発事故のこと、そして計画停電のこと。話は尽きなかった。明けて土曜日。群馬のお兄さんお姉さんに挨拶をして出発。東京に向かった。
まさに放浪の旅だ。子ども達はどんな思いなんだろう。
これからが一番人生で楽しい時なのに。今はほとんど旅行気分で愁いは感じられないけど。
車は埼玉に入り一路東京に向かう

埼玉に入ったところで和食レストランで食事をする
それまでにいろいろな噂を耳にしてきた。

福島ナンバーの車お断り!!
福島ナンバーの車がディズニーランド駐車場でフロントガラスに
「カエレ」と石で書かれていた
福島から千葉に避難した子供がいじめにあった
などなど・・・
同じ日本人としてどうかと思うがそんな噂を良く耳にしていたから
このようにレストランに入る時も気を使う
店に入ってすぐ

「あの・・・福島からですけどいいですか?」

と聞いた。

「そうですか。。大変でしたね。で、なにがですか?」

「いやあ・・車とか駐車場に・・・」

「そんなことお気になさらず。さあどうぞ」

ほっとした。ってかこれが普通でしょう

帰りにレジで

「あちらはどうなんですか?」

「いたって普通の生活を皆さんしてますよ」

「大変ですね。お気をつけて」

こんな些細な会話でも涙出るくらいありがたい。。

西東京の弟の家についてほっと一息。
子供たちはまだ旅行気分だ。

そのあと西東京ひばりが丘の駅前に夕食の買い出しにいく。
ひばりが丘駅前にパルコがあるが驚いたことに人がほとんどおらずなんと6時で閉店だそうだ。

駅前では子供を何人か連れた男性と女性が箱を持って
「今回の震災の被災地に愛の手を!!」
と募金活動を行っている。

ふと女性が箱を持って近づいてくる。

「あの。。よかったら募金お願いします」

んん。。。

「すみません。僕らは被災者でして」

「あ!そうなんですか。どちらから」

「福島の三春からです」

「それは大変でしたね。頑張ってください」

それから駅前で買い出しをしようと食料品店を回るがどこも品薄だ。。

「なんで?東京だろう?」

弟が言う

「まったく東京の奴らはバカばかりだよ。なんで東京で買いだめしなくちゃならないんだよ。」

「東京で買いだめ?」

「あるスーパーでパンを買いだめする客が凄まじくてあっと言う間に品切れ売り切れになったんだけど」

「うん」

「そのスーパーの隣にあるマクドナルドでは100円でハンバーガー売ってるのにお客がほとんど入ってないんだよ」

「それはウケるね」

さすがに品薄と言っても郡山ほどではなく無事に夕食分の買い出しはできた。
その日は弟宅に我々も泊めてもらう。
夜のニュースでは原発への東京都の消防隊員たちによる放水活動が報道されていた。
東京都消防隊員たちの記者会見を見て感動した。
この消防隊員たちや原発に残った東電職員や世の中には凄い奴がまだまだたくさんいる。

福島お断りで見そこなったところもあるがそうではない日本もまだまだあるようだ。

その後、母親を弟たちに預け嫁さんと子供を群馬に預け一人福島に帰ってきた。

一週間一人で過ごし翌週今度は子供たちを母とともに弟の家に預けに東京に向かった。
途中の埼玉でガソリンを入れたいがこちらでも大行列。
しかたなく行列に並んでいた。
ただ最近よく会うのは散々並んでからギリで

「すみません。。ガソリン終了です?」

と無駄並びが多く行列に並んでいる途中子供たちに

「偵察にいってきて」

と頼んだ。
子供たちは車を出て歩道をその先のスタンドまでひた走り
かなり時間がかかってから戻ってきて。

「大丈夫だよ。あの先にいるガソリンスタンドのお兄さんに何台大丈夫か聞いたら100台は大丈夫だって言ってたから数えて来たよ」

「この車は72台目だから給油出来るよ」

おお!素晴らしい!!給油できる!!ってか
凄い!!うちの高校二年生と中学校三年生!!
頼りになるよ。ありがとう

そんなこともあって無事東京の弟の家に到着。一泊してから
既にお世話になっている母とともに子供たちを預け
嫁さんと俺は翌日群馬に戻りそこで本宮のお父さん、お母さんと
合流して福島に戻ってきた。

そしてさらに翌週4月1日。
嫁さんと二人、母と子供たちを迎えに東京の弟の家にいった。
福島はまだまだ正常ではないがやはりいつまでも離れ離れに暮らすわけにもいかないし弟たちにも迷惑をかけてしまう。

こうして4月2日家族全員福島の我が家に戻ってきたわけだ。

会社の若い連中のなかには幼い子供と奥さんを沖縄に疎開させ今でも別々にくらいているのもいる。
息子も彼女が昨年秋に東京に疎開してしまい別れ別れになってしまった。
真夏でもマスクをして長袖長ズボンを履いて登校する子供たち
暑い中、冷房のない教室で窓を閉め切って演奏するジュニアフィルの子供たち

洗濯物が干せない。
外で遊べない。
村全体で避難しなければならない。
もう30年は家に帰れない。
たくさんの友達が転校してしまった小学校

40数年生きてきて初めての経験をたくさんしました。
人の冷たさも温かさも経験しました。

あのときはもう前の生活には戻れないかもと思っていたけど
今はなんとかほぼ以前の生活に戻っています。

でもあの時の経験はひとつひとつしっかり覚えています。
これまでの一連の内容もなにも見ずにどどっと書くことができるほど脳裏に焼き付いています。

遠くから心配してくださった皆さん。ありがとうございました。

ってことで311回想はこれで終了いたします。
ほぼ一年お付き合いくださいましてありがとうございました。

おしまい
news article by イトウシンイチ
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